「よし、と。じゃ、いくねー」




ばいばいと手を振って、右京は店を出た。




「…あれ、珍しいな。」




思わず立ち止まって、掌を前に出し、確かめる。



ぽつ、と雫がその上に落ちた。



寒気がなだれ込むこの地域で、雨は滅多に降らない。いや、一生に何回か見るか見ないか、それ位に珍しい。



普段、漂う水滴は寒さの為、刹那で氷に変わる。



それゆえに、氷霧の方がかなり見慣れているのだが。




「濡れちゃう。早くかーえろ」




別段気にすることも無く、翼を広げる。



そして、一陣の風を起こすと、右京は姿を消した。