藤田くんに近づきたいのに。




藤田くんはうざそうにファンの人たちをかき分けて、あたしの前を通って席に着いた。



「……っ!」



いま……一瞬だけ。

藤田くんと目があったような気がする。



あたしの目の前にくる少し前。

チラッとだけど、本当に一瞬だけど、あたしと視線が絡み合ったような気がする。



たまたま見ただけかもしれないけど
今はその小さなことだけでも全部嬉しい。



口の端に絆創膏をつけて、見慣れない顔になった藤田くん。

なんか………かわいい。



愛おしくなる。



「リコ〜…?目がハートになってる」



あたしの顔の前で、友里が手を振った。


わ…っ。
慌てて我に返る。


藤田くんが席に着くまで目で追っていたせいだ。



「なってない!ハートにまでは!うっとりしてただけだよ…」

「同じようなもんでしょ」