「リコ」

「…っ!」





藤田くんの声!





まるで飼い主に名前を呼ばれた犬のように。

あたしのお尻に尻尾がはえていたら、きっとブンブン振ってる。





「藤田くんっ!!」

「帰るよ」

「うんっ!!」





あたしが藤田くんの教室に行こうと思ってたのに!

わざわざ来てくれたんだ!





それがすごく嬉しくて、

目の前にいた萩原くんに急いで『じゃあ、あたしは帰るね!』と伝える。




クラスが離れてしまったからこそ、
いつもより倍くらい会えたことに嬉しさを感じる。




「あっ…うん、古賀さんまた明日ね」




と言った萩原くんの声はあたしには聞こえなかった。