その手を呆然と見つめるあたしに、
藤田くんはあたしの手から世界地図を奪い取った。




「あ、ごめん、そっちか」

「…そっちかって…じゃあ他に何考えてたの」



椅子の後ろでガコン、と丸めた世界地図が落ちる音がした。



「…や…手出されたら、さ。
その上に手出したくなるのが人間の無意識な行動…、では?」




ははは、と笑いながら。
落とした日誌を拾いながら。


苦し紛れで。

早くここから抜け出したいと思った。




「…リコだっけ、古賀サンの名前」

「あ、ウン。
王編に里と、子供の子で、理子」



突然呼ばれた名前のせいで
またどきっとした。




「…そこまでは聞いてない」



ずるいと思った。

あの藤田くんが、
かすかに笑った。