「…すき」 背中をポンと優しくたたく手。 「なにが?」 髪の間をするりと抜ける、大きな手。 「……全部」 声も、匂いも。 「それは嬉しいね」 その声がやけに近くに感じたと思ったら、耳にチュッと降ってきた。 「リコ」 「……ん?」 「俺もすき」 グサッと心臓に、藤田くんの声が刺さったような気がした。 あたしも、負けないくらいだいすきだ。