「どんな条件があるんだ?」
・・・おお、何とまだ興味もあるらしい!
あたしはちょっと嬉しくなって、ヒカリちゃんに感謝しつつ続きを話すことにした。
「ええとね、たしか。夏場のニューヨークで、穴をあけた紙から覗いてどれだけの距離で見える空の色、とかそんなの。何フィートとか色々決まりがあるんだって」
「ふうん。そりゃ確かに面倒くさい・・・」
帽子を被りなおして、横内がまた空を見た。ちょっとぼーっとしているみたいだった。
「あまり晴れてるとさ、空が」
小さな声で、彼が話しだした。
「ボール打ってても、相手のコートに打ち返さなきゃいけないのに上に打ち上げたくなるときがあるんだ。青空にボールが飛ぶの、ちょっと気持ちよくて」
・・・おお。それって前、体育の時間にあたしが考えてたのと同じ感覚!
あたしは嬉しくなってうんうんと頷く。
「判るなあ!黄色と青が綺麗だよね、くっきりしてるっていうか」
「うん。綺麗だなって思う。でもそれを部活中にやるとまずいから、自主練のときにするんだけどな」
頭の中で、一人ボールを空に打ち上げている横内の姿が浮かんだ。ラケットを水平にして、ポーンポーンと黄色い球を空に上げている。
その姿は想像じゃあなくて、あの体育の日に、実際彼がやっていたことだった。
コートの隅っこで、クラスメイトが飛ばしたボールを拾いながら。時折ポンポンとボールで遊んでいたのだ。
同じタイミングで、青と黄色に見惚れてたんだな。そう思ったら、ますます嬉しくなってきた。