「うわあ!」

「おわっ!」

 体に衝撃があって、あたしは後ろによろよろと後ずさる。転んだりはしなかったけど、肩から胸にかけて痛みが走っていた。

 また誰かにぶつかったらしい。全くあたしったら、走って角曲がるのやめなきゃね、そんなことを考えながら、謝ろうと顔を上げる。

「あ」

 相手が、ぶつけたらしい頭を抑えながら、苦笑した。

「・・・俺達、よくぶつかるな」

 横内だ!

 テニス部の制服であるらしいラインの入ったジャージの上下を着て、横内が立っていた。頭を押さえているということは、あたしの肩にぶつかったのは彼の頭なのだろう。・・・一体どんな姿勢で歩いてんだ?

「横内君。・・・あの、またごめんね。あたしが走ってて」

「いや。前みてなかったのは俺も同じだから。――――――――あ」

 呟くように言った横内が、パッと目を見開いた。

「へ?」

 あたしは彼の驚く意味が判らず、首を傾げる。え?一体何に驚いてるの?ってかどこ見てる?

 彼の視線はあたしの胸元。あたしが抱きしめている、エプロン。

「・・・・すげー青」

 真っ直ぐにエプロンを見ていた。あたしの乱暴に扱う絵筆の影響を受けてついた青に、目を見張っているらしい。

 だけどすぐに自分の言葉に照れたような顔をして、ほら、とあたし達の頭上に広がる青空を指差した。

「あの空と、同じだ。スカイブルーってやつ」