あたしは運悪く、部室の鍵をしめて職員室までもってくるようにと指示を受けてしまった。
「七海、ご苦労様」
「宜しくね~」
顧問に捕まるあたしを見て、薄情な部員は皆一気に姿を消す。
・・・くそう。
そんなわけで、あたしは一人部室へ戻る。皆がいなくなって、綺麗に片付いた部室はガランとしていて、まるで知らないところみたいだった。
閉じられたガラス窓の向こう側、180度の視界に広がる町並みがお昼の太陽に照らされて光っている。青い空にはところどころに白くて小さな雲が浮かんでいて、それはそれは平和な光景だった。
・・・あったかいなあ、ここ。
夕日が強烈すぎて普段は開けられないカーテンの向こうは、こんなに凄い風景があったんだ、と改めて思う。
山の上にある学校の4階、この教室からの景色はそこらへんの観光施設の展望台なんかよりもよっぽどいいのだ。さんさんと太陽が差し込む窓際で、あたしはしばらくぼけっと座り込んでしまっていた。
油の匂いと、温かい日差し。
静かな部室にあたし一人。
・・・・あ、こりゃ眠くなっちゃうな。さすがにお腹が空いてるし、そろそろ帰らなきゃ。
時計を見ると、既にここに座って40分が経ってしまっていた。
「あ、やばいやばい」
きっと顧問が心配してるはず。あたしはようやく腰をあげて、立ち上がる。その拍子に、イーゼルにかけてあった自分のエプロンに気がついた。
・・・あ!