式が始まり、校長の話になる。その話があまりにも長いため、多くの生徒が夢の中だった。勿論、奏もその一人だ。
 入学式も終盤に差し掛かる頃、多くの生徒が眠っていた中起きていた結翔、七瀬が、奏を起こしにかかった。
「カナ、起きろ。式、もうすぐ終わるぞ。カナ」
「し、島谷さん、本当にもうすぐ終わっちゃうよ?お、起きて」
 二人が何度も呼びかけていると、しっかりと閉じられていた瞼が、ぴくり、と小さく震えた。
「ん…?あれ、ねてた…?んー…。ゆい、ななちゃん、おはよ」
「お、おぅ。はよ」
「おはよう、島谷さん」
 眠たそうに、ふにゃりと笑って言う奏に、結翔は少しドキドキしながら、七瀬は可愛いな、と思いながら返事をした。
「んーっ。校長先生話し長いしつまんないから寝ちゃった」
「周りの奴らもみんな寝てたしな」
「う、うん。起きてる人の方が少ないくらいだったよ」
 そうしてしばらく三人で話している内に、式は終わり、教室へと帰るときも、三人で話しながら歩いていた。

 キーンコーンカーンコーン…
「やっと終わったねーっ!」
「おー終わったなー」
「うん。終わったね」
 七瀬がどもりまくるという事件があった自己紹介も無事(?)終わり、チャイムが鳴ると三人集まって話し始める。
「あっそういえば!」
 ポンッと手を叩き奏は声をあげる。
「なんだ?どうしたんだよ」
「何か、あったの?」
 不思議そうに聞いてくる二人にピッと人差し指をたてた手と視線を向け、奏は話し出した。
「朝会った野上先輩に改めてお礼言わなきゃと思って」
「あぁ、あの人」
「野上先輩?」
 疑問符を飛ばして首を傾げる七瀬に、奏は今朝あったことを話した。
「いい人ですね、その野上先輩という人は」
「うんっ!というかナナちゃん敬語混じってるよ」
 笑いながら言う奏につられ、七瀬も一緒になって、本当だね、と言って笑った。その二人を見る結翔も、うっすらと笑っていた。
「ねーユイ。先輩どこにいると思うー?」
「知るか」
「冷たいっ」
 軽く茶番を繰り広げる二人に微笑みながら、七瀬はひとつ、提案した。
「校門にいれば、会えると思うよ?」
「あっそっか!」
 今気づいた!と言わんばかりに顔を輝かせる奏に、七瀬は苦笑をこぼした。
「じゃあ私校門行こー。ユイは帰りたかったら先帰っていいからね!」
 そう言うやいなや奏は校門に向かうために教室を飛び出していった。
「……。行っちゃいましたね、島谷さん」
「あーおぅ。昔からせっかちなんだよな、アイツ。あと、次からは名前で呼んでやれよ。すっげぇ喜ぶと思うから」
「えっ?あ、う、うん…」