奏がふと周りを見渡すと、席のほとんどがうまり、あちこちで声が飛び交っていた。しかし、やはり知らない人が多いようで、奏はキョロキョロと周りを見ている。
「あれ、あの子…」
「ん?カナ、どうかしたのか?」
「あ、うん。あの子なんだけど…」
奏が指さした先、一番後ろの窓際の席。その席には、顔を隠すように俯く、ショートカットの女の子が座っていた。
「ね、ユイ。声かけてみようよ、あの子に!」
「は?いや、べつに俺は何でもいいけど…」
「じゃあ決定!ほら行くよ!」
結翔の腕をぐいぐいと引っ張り、奏は女の子のところへと歩いていく。女の子の目の前まで来ると、二人の影がかかったことに気がついたのか、女の子は顔を上げた。
「ねぇ!私、島谷奏!こっちは幼なじみの笹本結翔!あなたは?」
「えっわっ私?私は、あの、く、九条七瀬、です…」
戸惑いがちに名乗った七瀬に笑いかけ、奏はまた話しかける。
「九条七瀬ちゃんかぁ…。じゃあナナちゃんだね!で、ナナちゃんはどうして一人で顔隠すみたいに俯いてたの?」
「あ…。えっと、私、さ、最近こっちに引っ越してきたばっかりで、みんな知らない人だったから、話しかけられなくて…。も、元々人と話すのも苦手だから…」
「そうだったの?」
言いながらまた俯く七瀬。うーん、と唸りながら首をひねり、何か思いついたのか、パッと顔を明るくした奏は、七瀬の手を両手で握った。
「じゃあ、それ直すの手伝うよ!だから、私“達”と友達になって!」
「俺も強制かよ」
「い、いいの…?」
「うんっ!勿論だよ!」
「シカトか」
文句を言う結翔を無視し、奏は輝かんばかりの笑顔で七瀬と話している。七瀬も嬉しそうに笑っている。
「ったく…。しゃあねぇな」
にこにこと楽しそうな奏を見て、結翔はふっと優しく微笑んだ。その笑顔をたまたま見た七瀬は、ドキン、と胸が高鳴る音を聴いた気がしていた。
高校入学式の日に出会った四人
この日が
切なく苦しい
三つの片思いの恋の
始まりの日
「あれ、あの子…」
「ん?カナ、どうかしたのか?」
「あ、うん。あの子なんだけど…」
奏が指さした先、一番後ろの窓際の席。その席には、顔を隠すように俯く、ショートカットの女の子が座っていた。
「ね、ユイ。声かけてみようよ、あの子に!」
「は?いや、べつに俺は何でもいいけど…」
「じゃあ決定!ほら行くよ!」
結翔の腕をぐいぐいと引っ張り、奏は女の子のところへと歩いていく。女の子の目の前まで来ると、二人の影がかかったことに気がついたのか、女の子は顔を上げた。
「ねぇ!私、島谷奏!こっちは幼なじみの笹本結翔!あなたは?」
「えっわっ私?私は、あの、く、九条七瀬、です…」
戸惑いがちに名乗った七瀬に笑いかけ、奏はまた話しかける。
「九条七瀬ちゃんかぁ…。じゃあナナちゃんだね!で、ナナちゃんはどうして一人で顔隠すみたいに俯いてたの?」
「あ…。えっと、私、さ、最近こっちに引っ越してきたばっかりで、みんな知らない人だったから、話しかけられなくて…。も、元々人と話すのも苦手だから…」
「そうだったの?」
言いながらまた俯く七瀬。うーん、と唸りながら首をひねり、何か思いついたのか、パッと顔を明るくした奏は、七瀬の手を両手で握った。
「じゃあ、それ直すの手伝うよ!だから、私“達”と友達になって!」
「俺も強制かよ」
「い、いいの…?」
「うんっ!勿論だよ!」
「シカトか」
文句を言う結翔を無視し、奏は輝かんばかりの笑顔で七瀬と話している。七瀬も嬉しそうに笑っている。
「ったく…。しゃあねぇな」
にこにこと楽しそうな奏を見て、結翔はふっと優しく微笑んだ。その笑顔をたまたま見た七瀬は、ドキン、と胸が高鳴る音を聴いた気がしていた。
高校入学式の日に出会った四人
この日が
切なく苦しい
三つの片思いの恋の
始まりの日