「1人の命と、この世界。………イーチェはどっちを選ぶの?」
「………え、?」
「白き国の姫は、白き龍の器となる。龍の器が揃う時、闇は再び復活する」
「……」
「イーチェは知ってるよね、だって白き龍の器だもん……闇が何なのか」
魔物の王。魔物の親と言うべき存在。
魔を放ち、獣を異形の姿へ変え、人を狂わせる魔物
封印されてる今でさえ、その力は漏れている
魔は世界を滅ぼす
それを阻止するために生まれたのが、龍なんだ
そして、その逆もしかり。
魔物を生かす為に生まれたのもまた、龍である
「魔物が復活すれば、この世界は滅びるんだ。イーチェが奴らに捕まれば、それが近くなる……」
「でも、でも、オルフェが」
潤んだ目を僕へと向ける
それに僕はニコリと笑う。こんな事態で笑うなんてどうかしてると思うけど
「大丈夫…オルフェは死なないよ、まだ」
「え?それ、どういうーー」
「イーチェ!!」
僕に問いかける声は、ある女性によって遮られる
ポニーテールの朱色の髪が、イーチェに抱きつくと同時にフワリと揺れた
「……サーシャ」
「良かった、城には魔力がなかったから手遅れかと」
「言ったっすよ、自分は。奴らに姫が殺せるわけないってー」
「そうそう、殺したらわざわざここまで来た意味ないからね」
「……なに、私は殺されていたと思ったの?」