「………」




一歩足を下げ、イーチェを見上げる



多分、逃げ出そうとしているのは向こうにとって一目瞭然だろうなぁ。とか思いつつ、至って冷静の僕



ハハッ、何でだろ




「…リィエフルオ」


「ん?」


「チャキ」




片手で本を持ち、頭の中に残っている詠唱の一部を言う



勝手にペラリと、本が捲れる




「イーチェ!!」


「っ!」




低く、子どもらしからぬ声でイーチェの名を呼べば、それを合図にイーチェは走り出した



「逃がすわけないだろう。そもそも子どもが、」


「その子どもを、ただの子どもとは考えない事だね」


「……」




大丈夫、この後ろの道には甲板へ続く道しかない。当然だ。さっき、通ったんだしね。ドアの向こうも部屋だしね



ココでこいつに捕まるよりはいいだろう



そこらの兵であるならば、普通に助けられるはずだしね




「あぁ、君が例の子どもか」




例の。の部分に、眉を寄せれば




「実はね」




男はポケットに両手を突っ込む



僕はというと、最後の詠唱部分を唱えようとしていたが





それは叶わなかった