大丈夫、とでもいうように、僕はイーチェの手を握りしめた



ハッと、イーチェが僕を見る


それに笑って答える





「さて、姫君。大人しく、我々と来ていただけますか」


「………あの外の船も、貴方達の仕業?」


「えぇ。姫君達が船を使うだろうと思ってましたから」





チラリ、と僕は後ろを見る



………少し、騒がしいな


白兵戦、というところか





「イーチェ」


「!」




ボソリと、彼女にしか聞こえない声で言う



口もあまり動かさずに。




くぐもった声ではあるが、問題ないだろう




「囮になるから、甲板へ」


「な、」





ふぅ、と息を吐き、男に向かってニッコリと微笑む


男は細い眼をさらに細めて、僕を見た




「……」




スッと、イーチェの手を外し、本を抱え込む