キィィィ...キィィィ...
ああ、やっぱりやめておけばよかった
そう思いながらも純は重い足を進める
雲が流れ、公園が月の光で照らされる_______
「............」
キィィィ...キィィィ...
________綺麗な人だと思った
不気味な音は彼女がブランコに乗っている音なんだと分かり、安心した
「......こ、こんばんは」
キィィィ............
彼女は漕ぐのをやめ、こちらを見た
綺麗な茶髪に、赤い、目......?
「_____何か用?」
「え、あ、えと...」
話しかけたのはいいが、何を言おうか考えていなかった
戸惑っているとクスッと笑う声がする
「君、表情がコロコロ変わって面白いね」
「へっ!?」
「楽しそう」
そう言って、彼女は僕に隣のブランコに座るよう言った
僕はそれに従い、隣の空いているブランコに座る
「_____ねぇ、私の話、聞いてくれる?」
「.........」
「実はさっきさ、彼氏にフラれたんだ」
_____彼女は笑顔だった
「今日、急に電話でそう言われたの」
____でも声が震えていた
「...信じられなかった、受け入れたくなかった」
______ああ、彼女は
「だって...!4年も付き合っていたのに...!!!」
_____やっぱり、悲しかったんだ
「まったく理由も言わずに、ただ別れてくれなんて!!そんなの可笑しいよ!!!いつだって私に好きだって言ってくれて!愛してるなんて言って.........!」
「...結局は皆、私の事を嫌いになっていくのよ...」
_________皆?
「...あ、ごめんなさい...困ったでしょ?」
「いえ...その......」
_____彼女を、僕が支えてあげたいと、思った
_____僕を、好きになって欲しいと思った
「...いきなり、なんですが...」
「...?」
「...な、名前...聞いていいですか...」
彼女は泣いた目を擦り、笑って
「佐藤 南」
手を差し出した
少し握っただけで折れてしまいそうな、そんな手だった
ゆっくり握り返した
「...私、そろそろ家に帰らなきゃ」
ブランコから降りて、公園の出口に向かって歩いた
_____僕もそろそろ帰らなきゃ
「あ」
「?」
「君の名前、聞いてなかったね」
「あ...えっと、岡田 純です...!」
「ふふっ純くんか!」
さっきまでの涙が嘘のように、ニカッと笑う
「じゃあね!純くん!!」
「は、はい!!お元気で!」
走っていく彼女の後ろ姿を見て、確信した
_____好きになってしまったんだと
顔熱い、胸が痛い
こんなの一度もなかった
ああ、また、会えるといいな_________