「……あんま束縛しちゃダメだよ」

「無理って言ったらどうする?」

「それが無理です」



そっと私の頭に手を乗せると、ゆっくりと髪の毛を梳いて行く。
私の髪の毛で遊びながら、秋人はふふっと笑って目を細めた。



「愛ちゃんのシャンプーっていい香り。
何使ってるの?」

「え?これはほら、最近CMでやってるヤツ」

「あ、MAYの?」

「そうそう、MAYの」



秋人は私の髪の毛を一束掬うとそれを鼻に近付ける。



「ちょ、匂い嗅がないで」

「だって、いい香りなんだもん」

「近い。近いから。ここ、教室」

「じゃあ、二人の時ならいい?」

「ダメです」



何か、そっちの方がダメな気がするのは何でだ。
いいじゃん、ダメです。の押し問答を繰り返していると、後ろから冷ややかな声が聞こえてハッとした。



「目の前でイチャイチャするな。うっざい」



その声の主は本間。

背もたれに寄りかかって、腕を組み細目でこっちを軽く睨みつけている。