本間は手を離さずに私を見ると、

「ああ言っておけば楽じゃん。沙紀と揉めてたなんて言えないでしょ」

そう言った。



確かに。
確かにそうだ。


沙紀さんとの事を言えない。
言うつもりもないけど。


本間と何かがあった風にとられるのも、めっちゃ嫌だわ!!
不服だ!!



そう思った私は、恨みも込めて本間の手の肉を思いっ切り噛んでやった。


「いっでえ!!」

「本間が悪い」

「愛ちん、今日酷くね?暴力的。DVですか」

「私はセクハラとして訴えてやる」

「うわ、最悪です、それ」

「いいから、ラブと清二、中に入れ」


ぎゃあぎゃあする私と本間に割って入ったのは、結城学級委員だった。
その声は恐ろしく低くて、冷たい。


私達はすぐに頷くと中へと入った。


結城の奥には有紗に由紀に翔子。
三人とも心配そうに私を見つめている。


「愛、大丈夫だった?」

「うん、全然」


沙紀さんは結構、手強かったけど。
それでも、好きだって気持ちがわかるからな。


「沙紀には謝罪させてたよ、秋人が」