「まあそんなに気にすることじゃないですよ!先輩!先輩美人だし、仕事も出来るし、男の人なんてすぐに寄ってきますって〜。」

頼んだ日本酒が出てきて嬉しそうな伊藤は、春香の肩を叩きながら元気付けた。
…つもりだった。
春香は大きいため息をつき、グラスに残った酎ハイを飲み干す。

「…川瀬?」
「…いないのよ。」
「え?」

松田と伊藤は共に目を丸めて、春香を見つめる。

「…い、今まで彼氏いないのよ私。年齢=彼氏いない歴ってやつ。」


一瞬、ほんの一瞬静かになった。
そしてすぐに二人の声が辺りに響く。

「えっ?!先輩、それ本当ですか?」
「お前が…って信じられないんだけど。」
「嘘つかないわよ、こんなこと。」

春香は飲み干したグラスの中をずっと見つめていた。飲みの場とはいえ、少し話過ぎたことに後悔し、恥ずかしくて二人を見ることができなかった。

「うーん、先輩って確かに少し近寄りがたいかも。」
「あんたさっきと言ってる事違うわよ。」
「先輩はなんかこう、一人でも十分生きていけそうというか逞しいというか。女として見られないのかも!」

伊藤も少し酔いが回り始めていると、分かってはいても春香は少し頭にきていた。だがグッと堪える。そして何より言い返せなかった。

松田も「今日の伊藤は絶好調だな…。」と苦笑いしていた。


「先輩、まずは合コンじゃなくて女子力アップです!」
「女子力アップって言っても、何をすればいいの?私料理も裁縫も人並みにはできるし、メイクやオシャレも別に怠っているつもりないんだけどな…。」
「私この前テレビで見たんですけど、花って女子力アップにいいらしいですよ!」
「花?」