「……さようなら」



ママに背中を軽く押され、私はしぶしぶ口を開いて一言だけ。



でも、なにも返事がない。


言ったのに私!


バイバイの一言ぐらいくれたっていいじゃん……。



そう思いながら見つめていると、千景くんが動いた。


ポケットの中に手を突っ込んでなにかを握りしめて、グーにしたまま私に向けた。


その手の中はなに?


千景くんのことだから、虫とか石とか食べ終わったあとのアメの袋とか……なんて。


内心、びくびくしながらも両手で受け取ろうと差し出してみれば。