「なんで黙り込んで涙目になってんだよ」
「……千景くんの卵焼きがおいしすぎて。好き」
下手すぎか、話そらすの。
うー……
どうしようもない感情が込み上げて来る。
泣きたいわけじゃない。
今は千景くんの呆れた顔が見たいわけじゃない。
静かにお箸を置いた千景くんの手が私の唇に触れてくる。
顎に添えた指は意外にも力が入っていて、顔を引こうと思っても離してくれない。
「物分かりいい子なんかじゃないだろ、愛生は」
真顔を崩さない千景くんの冷やかな視線が少し痛い。
チクチクと胸を刺す。
さすがに面倒な女だと思われた?
でもーー……っ!
「じゃあ全部言わせてもらうけど!
千景くん彼女いるくせに他の女子と楽しそうに話してる。距離近い。私だってそんな学校でベタベタ触ったりしたことないよ!!」