「愛生」
「わっ、千景くん、どうしたの…?」
2階に上がって愛生の部屋を見てみると…いた。
背中を向けて立っている姿があった。
ベランダに干されているものを見て、洗濯も終わらせてくれたらしい。
「あ、ちょっと部屋勝手に…!」
「入っていい?」
「もう……なんですか」
近づいていくと顔だけ向けていた愛生がまっすぐこちらに向きを変えた。
その手には見覚えのある小さな髪飾り。
保育園の卒園式で俺があげたやつ。
そんなもの握りしめてなにしてんだ。
「そんなに気に入ってんのそれ、つけてるの見たことねーけど」
「宝物だよ。大事にしすぎて眺めることしかできない」
「……ふーん」
その手から髪飾りをとってつけてやると愛生が伏し目がちに小さく微笑んだ。
だけど、次に見せた表情に鼓動が大きく揺れる。
俺がさせてんのか。
またそんな泣きそうな顔を。