首に回した腕はそのままに手を伸ばして、真っ赤に染めた頰をいじってやろうと少しつねった。
どさっと音を立てて、
愛生は力が抜けたように床に膝をついて俺の手からもすり抜ける。
視線を泳がせた数秒、遠慮がちにそれは俺に向けられる。
「どういう……意味、今の……」
「んー」
「そうやってごまかす。ばか。ずるい」
「愛生って照れると口悪くなるんだ? かわいーね」
小さく笑いながら言うと、愛生は眉根を寄せてさらに表情を険しくさせる。
いい反応。
ほんと、かわいいね。
……とか、こうやって思うことも増えたんじゃないの俺。
ねえ?
「もう髪乾いたっ!おわり!!」
「……おい、愛生」
俯きがちに早口にそう言って離れていく。
一瞬見えた顔が泣きそうに歪んでいて。
腕を掴んで引き止めようと思ったけど、今度はするりと抜けていく。