後ろに振り返ろうとした俺と顔を近づけてきた愛生の距離がゼロになる。
ちょうど愛生の口の端にぶつかったまま、動けないでいた。
俺の声に聞き返した時にドライヤーを止めたのか、やけに静かで。
その静かな空間の中、時が止まったままみたいな感覚になる。
俺は最近どうやら自分の感情をうまくコントロールできないらしい。
愛生の首に腕を回して引き寄せて、その唇を塞いだ。
抵抗できないとでも諦めたように静かに目を瞑った愛生。
その顔を見て、同じように瞼を閉じる。
体温を感じていたいという思いと、そろそろ離してやんなきゃなって思いが頭の中でめぐる。
「……昨日はどうだったって聞いてんの」
「う、うんっ…楽しかった、よ」