【side:千景】




着信音で目を覚ます。



相手が誰かなんてだいたい想像できてる。



数秒の間、出ようか迷ったけど果てしなくしつこそうだから今出てしまおうと思った。



「なに、愛生」



『ざーんねーん! 俺、前園大志でしたー』



「…病人に何の用?」



『俺じゃなくて聖菜ちゃんが用あるってー』




画面に表示された名前もよく見ないで出たら、大志からだった。


うるさいのは、愛生も大志もそう変わらないか。



「丸山さんが、なにか?」


『今かわりまーす!』



上半身を起こしてベッド横に置かれたペットポトルを掴む。



今朝、愛生が何本も置いてってくれたやつ。


おかげでいちいち冷蔵庫まで行かずに済んだから、助かってるけど…こんなに数いらねーだろ。