「さっきの愛生の姿とか言葉とかが、小さい頃の俺に重なって見えた。
本当は俺もそうやってぶつけて受け止めてもらえたかったよなって思ったら、気づけば愛生のこと抱きしめてた」
ずっと待ってたのに、って泣き叫んでいたっけ私。
感情のコントロールなんてその時は考えられなくて、
もうただただ一方的にがーって千景くんにぶつけた。
「愛生が大知先輩たちと遊んだ日さ、早く帰ってきたじゃん。千景くんが待ってるから、って言ってくれたの覚えてる?」
「うん」
「あれ……嬉しかった」
「ふふっ…そっか」
千景くんが素直。
…そっか、そういうことだったの。
あのとき千景くんが一瞬、驚いたような表情をした理由。
千景くんが待ってるんだから、ちゃんと帰ってくるに決まってるでしょ?
当たり前って私は思ってることでも、千景くんにとっては違うんだね。
お母さんが帰ってこなくなったように、
突然に当たり前が壊れることを知っているひとなんだ。