「もう何年も経ってるし戻って来てほしいとは思ってないけどさ、子どもの頃の大ダメージって影響すげーな。
以上、千景くんが夜は眠れないって話でした。はい、おやすみ」
頬を軽く撫でられて、思わずその手を掴んだ。
千景くんもされるがままでいてくれて、きゅっと力を込める。
「……もっと子どもらしく泣き叫べばよかったんかね。
我慢なんて覚えずに、泣いても母親が帰ってこないとわかっててもそうやって、感情をぶつける」
会えなかった10年、
千景くんは千景くんなりに、やってきたんだ。
小さな千景くんは、そういったことをきっと表に出さず、平気なフリをしていたのかな。
昔も今も相変わらず仕事が忙しいお父さんを困らせたくなくて、とか。
男の子だから、とか。
子どもながらにいろいろ考えて抱え込んだ、千景くん。
小さい頃の千景くんに、私がいるからねって抱きしめてあげたい。
胸がいっぱいになる。