ほらほら早く、と急かされて私は強く拒否することもできず。
ベッドの奥へと追いやられてしまった。
2人で寝るのは狭いでしょこれ…
少し動けば肩がぶつかるぐらいすぐ隣にいる千景くん。
千景くんに背を向けるのも絶対なにか言われるだろうし、かと言ってそっちに体を向けるのもなぁ。
ドキドキしちゃってること、気づかれてませんように。
「……いつからだっけ、夜眠れねーの」
ぽつぽつと話し出す千景くん。
全部聞き落とさないようにしっかりと受け取らなきゃ。
そう思ったら自然と横向きに体を傾けていた。
聞いてるよって、その瞳を見つめた。
「家を出てった母親を毎日のように寝落ちするまで起きて待ってた」
どこか遠くを見つめるようなぼんやりした目つきで、静かに続ける千景くん。
「実際、保育園の時らしいけど、出てったんだと俺が理解したのは小学校に上がってから」