「っ……う〜っ…」
玄関前にしゃがみこんでうずくまる。
打ちつける雨音で、漏れる泣き声をかき消してほしい。
泣いてることに気づかなくなるぐらいにもっと、消して。
「愛生?」
微かに聞こえた声に顔をあげると、そこにはずぶ濡れの千景くんが立っていた。
「ーー……っ千景くん!なんで連絡返して来れないのっ!?なにも言わずにこんな時間まで帰ってこないのはさすがに心配するよ!
私、ずっと待ってたのに…っ
このままもう帰ってこないんじゃないのかって思った。
千景くん……どっか行っちゃやだよぉ…っ!」
勢いよく立ち上がって、力任せにその腕を掴んで、
雨音に負けないようにって、言い方も強く聞こえたかもしれない。
言いたいこと一方的に言って、
自分でもびっくりするぐらいに弱々しく甘えたような声だしちゃった。
「ーー…っ、俺、ちゃんと帰って来たから…」