――千景くんの、声。




「あー、うん。俺の後ろに」



「っ!……小っさすぎて、見えなかった」




ひょこっと横に顔をずらして様子を伺うように見上げると、やっぱりそこには千景くんの姿があって。



私を見るなり背中を向けて自分の席へと戻っていっちゃった。



な、なに?




「ホントはさ、校門の前に立ってる愛生ちゃんのこと先に見つけたの千景なんだよ」


「え…」


「待ってたくせに自分で迎え行けばいーのにね」




小声でそう教えてくれる。



待ってたって、なに。



新しく知ったことに、また気持ちをかき乱される。


なにそれ。


なんなの……千景くん。


千景くん、こんなときに優しさを見せるのは間違っていると思うよ?




「愛生ちゃんおはよう〜今日は遅かったね?」


「あはは、ギリギリだね…」




その笑顔に私もつられる。



聖菜ちゃんの様子じゃ、まだ知らないみたいだ。