「千景くん好きだよ」
家に着いて玄関先で。
ローファーを脱いでいるその背中にポツリと投げかける。
またそれ?……なんて、笑われそうだけど。
他に言葉を見つけられないの。
「……先延ばしにしてもしょうがねーな」
そう言って振り向いたその目と目が合う。
「愛生。お前、明日から俺の彼女終わりな」
どれぐらいその目を見ていたんだろう。
今のは冗談だよ、びっくりした?とか
そんなありえない話を頭の中で展開してるぐらいに私は起きていることを拒否したい気分だった。
信じません。
聞きたくありません。
だけど、どこか残っていた冷静さがこれは夢なんかじゃなくて現実だよと教えてくれる。
「愛生のこと、考えた。でも愛生のしてほしいこと、俺は答えらんねーから」
私のしてほしいこと…
本気で好きって言ってもらえること
隣にいてほしいということ
どれにも答えられないって?