信号待ちで隣に並んだ千景くんの横顔を見つめる。
ただ前を見つめていて、こちらには視線を向けない。
いつもあることなのに、なんだろう。
待ってやっと会えたというのに。
急に胸がざわざわしてきて、落ち着かないのはなんで?
「…行かねーよ俺は」
「じゃあ私も行かないよ。…先輩となに話したの?」
「……愛生のこと」
掴もうとした手を千景くんはスルリと抜けて前に進み出す。
繋ぎとめてもらえないように、私も千景くんのことを繋ぎとめることはできないの?
こんなに千景くんのことで頭いっぱいで、他の人のこと考えられる隙もないぐらいなのに。
好き、なのに。