「俺、数学の教科書わすれた。誰かに借りてくる」
千景くんは思い出したようにそう言って隣のクラスへと入っていった。
千景くんでも忘れ物とかするんだ。
ちょっと意外。
抜けてる面もあるなんて、かわいいな。
「愛生ちゃん、千景とはどうよ?」
「どうだろ、まだなんとも…」
連休中にあった出来事を思い出したけど、一応なんとか解決したし話すほどでもないかなと思って黙っていることにした。
聖菜ちゃんにも話してないしな。
「俺も聖菜ちゃんも、愛生ちゃんのこと応援してるから。愛生ちゃんならアイツのこと変えちゃう思うなー?本気にさせられると思う!」
前園くん……そんなこと思ってくれてたんだ。
「ありがとう。頑張るから見てて!」
ぐっと作った両拳をぶんぶんと上下に振り、気合を見せる。
憧れの両想いになってみせますよ。