視線を動かすとすぐ近くに千景くんの顔があって、私が少しでも動けばぶつかりそうな距離だった。
覗き込んでくるその瞳はずるい。
視線を外そうとすれば逃がさないとでもいうように、顔を千景くんの手で挟まれて固定される。
「キス現場見てショック受けて帰ったんだ?」
そうなんでしょ?と言いたげな顔。
そう聞いてくるからコクリと頷くしかなかった。
顔の熱は上昇する一方で下がることを知らない。
泣きそうになってくるのは恥ずかしさにたまらなくなって。
この距離でまっすぐに目を向けてくる千景くん。
視線をそらすことを許してくれない千景くん。
私はどうしたらいいのかわからなくて困ってるのに。
なんでそんな意地悪なの?
「ふーん、愛生って本当に俺のこと好きなんだ」