「ごめん、千景くん…」
「なにも言わず勝手に帰んのやめろ」
「すいません……」
「用事ってなに?つまんなくなったんならそう言えば帰った」
「っ、見ちゃったの! 深山さんとキス、してるところ……飲み物買いに行って戻った時……」
電話で言えなかったこと、勢いで言えた。
横から視線を感じながらも私は自分の足元を見ていて。
焦ってるからなのか、うまく靴紐がほどけない。
どんどん複雑化されて結び目が固くなっていってる気もする……。
「手どけて」
「っ……じ、自分で」
「いいから。俺がやったほうが早い。見ててイライラする」