もし、千景くんが家に来なかったら私はあの家で一人暮らしをしていたんだよね。
朝も夜も、ご飯の時もくつろぎタイムも、全部ひとり。
それに千景くんと再会できていなければ、直接話すことも、彼女になることもできなかった。
千景くんが来てくれたことに感謝しなきゃいけないな。
千景くん。
千景くんの声が聞きたい。
再会してからさらに私の頭の中は千景くんばかりになっちゃってる。
きっと千景くんが思ってる以上に私はきみのこと好きだよ。
だから、あんなキス見ちゃって当然悲しいに決まってるじゃん。
泣きたくないのに勝手に涙が溢れてくる。
鼻水まで出てくるもんだから服の袖では対応できなくなっちゃって。
「っ……もー……!」
ハンカチを取り出そうと、開けたバッグから見えたスマホの画面がちょうど明るくなっていることに気づいた。