逃がすまいと必死だった。

この機会を逃せば、ハルナを抱くチャンスを永遠に失ってしまうかもしれないと言う恐怖がオレの冷静な判断を奪い取っていった。



そして、藤枝徹……。


嫌でも時折、あいつの顔が浮かぶ。

だけど、オレはあの夜を思い出す度、この後悔こそが自分の望んだ結果なんだと、ギリギリと歯を食い縛り、手の爪が肉に食い込む程、自分に言い聞かせてきた。

「それでも、あいつにだけはハルナを渡さない!」

不安定なハルナの心が、闇の中に落ちてしまわないよう、オレは幸せな未来を紡ぐことで償っていこうと思っていた。