私の声にその男の人は振り向く。


……!

違う!



トオル君じゃない……


トオル君じゃ……ない……

私は掴んでいた歩道橋の手すりから手を離しバランスを失うと、そのまま歩道橋の下へと転がるように滑り落ちていた。

歩道を歩く人が、

「大丈夫か?」

「まぁ、あなた大丈夫?」


と、口々に言いながら辺りに人垣の層を作っていく。