産むつもりなんてないのに、でも、赤ちゃんが苦しくないようにと気遣って、ゆっくりと歩く。

駅の近くの歩道橋を上ろうとした時、反対側の道路に金髪の男の人が歩いているのが見えた。

その後姿にハッとなり、私は無我夢中で、歩道橋を駆け上がっていた。


「トオル君!!待って!トオル君!!!」

強い向かい風に煽られて、マフラーがするりと首から落ちて歩道橋の下を走る車の上に落ちていく。


「トオル君!!行かないで!!待って!!!トオル君!!!」