僕はそのまま車を走らせながら、以前聞いた老師の言葉を思い出していた。


トオル、人はな感情の生き物だ。

間違えを指摘し、正そうとしてもおいそれと認めたりゃぁせん。

恨まれるだけじゃて。

相手の考えを思うままに支配しようとしてはいかん。

理解し、歩み寄るんじゃよ。


理解……。

僕は、片岡和人の何を理解すると言うんだ?

あいつは間違っている。


僕は今、確かに『怒り』という感情に支配されているのかもしれない。

だけど、それは正当な感情じゃないのか?