帰りの道は混んでいて、僕はラジオをつけながら緩やかな車の流れの中で前方を見つめていた。

その時、見覚えのある影が歩道橋を渡っていることに気付いた。

回りの人間より頭一つ分大きな影は、ゆっくりと歩道橋の階段をこっちに向かって降りてきていた。


あいつだ!



僕は、衝動的に車から飛び出すと、ガードレールを飛び越え、その男を押し倒し馬乗りになる。

「なぜ無理矢理彼女を抱いた!」

僕の手は、確実にヤツの喉仏を捕らえていた。