次の瞬間、君がバスタブから上がる音がする。

そして、君は椅子を引き、そこに座っている。

僕は、速く打ち始める鼓動を深呼吸で押さえ込むのに必死だった。

「ハル……ナ、バスタブから出なくてもいい……よ。

お風呂から仰向けになる形で頭だけ出してくれればいいから」

お風呂の戸を開けると湯煙の向こうに桜の花のような頬をした君がいた。

「この縁に首を乗せる感じで仰け反ってくれれば……」

君は僕の言う通りにタオルで胸を隠すと、目を瞑る。

だけど、安心しきったように体を預ける君の無邪気さが、余計に僕の心を掻き乱す。