「それに、僕が一体誰なのか、知ってどうしようと言うのかも、実は分からないんだ」

トオル君は深い混乱と悲しみの中に今も住んでいて、その場所にずっと漂流している……


そんな気がした。


遠く海の上を滑空するカモメが見える。

その姿はなんだか物悲しく私の目に映る。



まるで棲家を失ったカモメのようにトオル君の心は、港を求めてさ迷っているような淋しさが潜んでいた。

私は初めてトオル君を助けてあげたいと思った。

そして、守ってあげたいと……。