海岸線沿いに車を走らせるトオル君の横で、私はフロントガラスの先の涙に歪んだ景色を見ていた。

「僕は両親のことを本当に愛しているし、尊敬もしている。

だけど、僕が一体どこから来たのか、僕自身のルーツを知りたいんだ」

「お父さんやお母さんには何も聞かなかったの?」

トオル君は頭を振る。

「知りたいと思う一方で、両親を傷付けたくないとも思うんだ。

何も知らない小さな頃は無邪気に聞いていた……。

でも、いつも両親は困った顔をして何も答えてくれなかった。

だから、今は、もう……あえて聞かない。恐いんだ。本当のことを知れば何もかもが崩れてしまいそうで」

「……そう……」