「トオル君のご両親にちゃんとご挨拶したかったな」

車に乗り込み、ポツリと私が呟く。

「ごめん。今朝は、急用が入って。今度、改めて紹介するよ」

「印象を悪くしてないといいけど……」

「それは大丈夫。両親は、大学を出てから僕の行動を信頼するって言ってくれてるから」

「大学?」

一瞬、しまったという顔のトオル君が私を見る。

「みんなには言わないでくれる?」

「……うん」

「僕はアメリカで大学院を出てるんだ」

「大学院?!」

驚く私に彼が頭を掻く。

「できれば、内緒で」

「……わかった。言わない」

「助かるよ」

トオル君がエンジンを掛けて、車道へと滑り出す。