トオル君は、人差し指を立てると唇の前に立てる。

そして、ケータイをポケットから取り出すと片手に持って、その唇に当てた人差し指で今度はケータイを指差す。

ノクターンの曲が流れ、慌ててカバンからケータイを取り出す。

「ハルナ、これからちょっと出て来れないかな?」

もう二度と聞けないと思っていたトオル君の声がケータイから聞こえてくる。

私は、急いでカーディガンをはおると、転がり落ちそうな勢いで階段を駆け下りた。