「そうだったんですか。すみません。失礼な態度を取ってしまって」

トオル君はほっとした様子で、かずにぃに右手を差し出す。

でも、かずにぃはそれを無視して、再び私の肩に手を回す。

「とにかく、ハルナ、車に乗れよ。雨もひどくなって来た」

トオル君は差し出したままだった右手を、バツが悪そうな顔で引っ込める。

そんなトオル君の姿にも胸が痛む。

一瞬でも、告白するタイミングを失ってほっとしたのは事実だ。

ずるい自分……。

かずにぃが何も言わないでいてくれたことに私は心からほっとしたんだ。

でも……そんな汚い自分が許せない。

もう、これ以上、何も知らないトオル君の笑顔を見るなんて私には出来ない。

私は、かずにぃの手を払ってトオル君の前に歩み出た。