「車は、後10分くらいでさっきのコンビニに着くらしい。
浴衣を着せるから、軽く羽織って」

藤枝君は、私に浴衣を渡すと背を向けた。

「浴衣、羽織ったよ」

私が告げると、彼がこちらを向く。

「立っているのはつらいと思うけど、しばらく我慢してて」

私は彼の鮮やかな着付けに感心するばかりだった。

「じゃ、出ようか」
「……うん」

何だろう、この物足りないような淋しい感じって。

急に切なさが込み上げてくる。