建物の中に入ると、彼の言うとおり幾分暖かかった。

藤枝君がそぉっと私を下に下ろす。

そして、藤枝君は大きなパネルの前に立ち、ランプが点いている部屋のボタンを押すと、フロントへとさっさと向かう。


(藤枝君、慣れてる)


藤枝君はフロントで、鍵を受け取り、お金を出そうとして、財布から小銭をいっぱい落とした。

(藤枝君、もしかして動揺してる?)

フロントのおばさんが、私たちをジロジロ見ながら、小さな窓から上目遣いにぶっきらぼうに話し掛けてくる。

「料金は後払いよ!」

「あ、そうなんですか」

藤枝君が恥ずかしそうに頭を掻く。