サラの家に着くと、彼女は丁度ピアノのレッスンの真っ最中だった。

僕が玄関のチャイムを鳴らすと、サラのお母さんが温かな笑顔で迎えてくれた。

「まぁまぁ、トール!退院おめでとう。大変だったでしょう。さ、入って頂戴」

サラは夢中で練習を続けていた。

僕が戸口に立っていても気が付かない様子だ。
やがて先生の方が先に僕に気付いて軽く会釈をしてくれた。

僕もちょこりと頭を下げた。