「ここは禁煙ですけど」

僕の言葉は言下に無視される。

男は『ヒューバート・キンケイド』と名乗り右手を差し出す。

「……」

「まぁ、いい」

いつまで待っても手を差し出さない僕に苦笑いして、ヒューバート・キンケイドは手を引っ込める。

「トール・フジエダ。君は、3年前にある事故機に乗って日本から戻ってきたんだよね」

キンケイドはベッドサイドにパイプ椅子を引き寄せると、背もたれをくるりとこちらの方に向け、椅子に跨り、背もたれを抱き抱えるようにしながら、じっと僕を凝視する。