無精髭をはやし、ルーズにネクタイを結んだ30代~40代とおぼしき男はゆっくりと隅から出てくると、夕陽を背後に僕の方へと歩いてきた。

「驚かせてすまなかったね。実はオレはこういう者で……」

男は僕に名刺を渡した。

僕は心的な動揺があるといけないという病院側の配慮から、両親以外の人間とは一切面会しないことになっていた。

「どうやってここに……!」

「しーーっ!」

大声で叫ぶ僕に向かって、男は人差し指を立てる。